海龍王寺は、平城宮跡の東に隣接する藤原不比等邸宅跡の北東隅にあり、その立地から長らく隅寺(すみでら)と呼ばれてきました。平城遷都以前から前身寺院がこの地にあり、不比等の死後、娘の光明皇后が邸宅を引き継いだ際、改めてこの寺を開いたと伝わります。 
 現在の寺名は、初代住職の玄ム(げんぼう)が唐から帰国する際、暴風雨で大揺れする船内で一心に海龍王経を唱え、無事帰国できたという伝承によります。かつては空海も、当寺で渡航安全を祈願しました。そのため今も旅の安全を祈るお寺として知られており、本尊の前には世界の七つの海の水が供えられています。西金堂内の五重小塔は高さ約4メートルで、工芸品ではなく建築物として国宝に指定されています。 
 門前の道は平城京の東二坊大路跡です。表門を出て右側に少し歩くと変形の四ツ辻に出ます。南からのびてきた道が、ここで寺の敷地を避けるため直角に東に約60メートルずれています。千三百年前の平城京の名残りをぜひ味わって下さい。 
 
【奈良まほろばソムリエの会 大久保衞】 
 
 
 ■宗派 真言律宗
 ■住所 奈良市法華寺北町897
 ■電話 0742−33−5765
 ■交通 JR・近鉄奈良駅からバス法華寺前下車徒歩すぐ
 ■拝観 9〜16時半(特別公開時は17時まで)
 ■駐車場 有(無料)
  
  
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