春日山(しゅんにちさん)不空院は、鑑真和上や弘法大師空海が止住(じじゅう)したと伝わる古刹です。本尊・不空羂索(けんさく)観音坐像は、東大寺法華堂や興福寺南円堂のものとともに奈良の「三大像」の一つとして有名です。「不空院古絵図」に描かれていた本堂・八角円堂は、江戸時代後期、安政の大地震で倒壊しましたが、大正時代、三谷弘厳・先々代住職がその礎石の真上に現在の本堂を再興しました。 
 古絵図の弁財天社に祀(まつ)られていたのが、室町時代の秘仏・宇賀(うが)弁財天女坐像です。女人の救済と庇護に霊験あらたかな仏さまで、別称「福院」といわれるほど信仰を集めました。頭上に宇賀神を乗せた典型的な神仏習合の姿で、八本の腕に武器と財宝の象徴を持っているのが特徴です。 
 5年後に大正再興100年を迎えるにあたって、本尊左の厨子内に祀られている弁財天像のお堂を整備することを三谷真漣(しんれん)・現住職が発願し「弁財天安置堂」(仮称)の建立準備に入りました。 
 毎年9月第1土・日曜日には、弁財天に音楽や舞踊を楽しんでもらう「かなで奉納」(入場無料、申し込み不要)が開催されます。 
【奈良まほろばソムリエの会 会員 増田優子】 
 
 
 ■宗派 真言律宗
 ■住所 奈良市高畑町1365
 ■電話 0742・26・2910
 ■交通 JR・近鉄奈良駅からバス「破石(わりいし)町下車、徒歩約10分
 ■拝観 9~17時、境内自由。本堂拝観は春秋特別公開時のみ可、600円。
 ■駐車場 無
  
  
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