やまと百寺めぐり
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第74回 2020年10月22日掲載
コジイ、ヤマモモ茂る寺  王龍寺(奈良市)


天然記念物のコジイに囲まれる本堂=奈良市二名の王龍寺で

 古来、「とみのおがわ」と歌に詠まれ、親しまれてきた富雄川から西の丘陵へ上ってゆくと、鬱蒼(うっそう)としたコジイの林の一画に黄檗(おうばく)宗王龍寺(おうりゅうじ)があります。
 山門をくぐると、こけむした石畳と石段の参道が続きます。しばらく上がるとお地蔵様が集められており、滝が落ちる行場もあり、澄み切った空気が心地よいです。
 石段の上に本堂が見えてきます。本堂の内陣には大きな花こう岩に刻まれた、本尊十一面観音が静かに立たれます。
 聖武天皇の頃に、寺は建立されました。磨崖仏(まがいぶつ)は南北朝の時代に刻まれます。その後、寺勢は衰退しましたが、江戸時代に禅宗の寺院として今の本堂が再建されました。途切れることのない人々の信仰の場であったことがわかります。
 境内の森の中には、大国堂、鐘楼などが残されています。
 庫裡(くり)のそばにそびえるヤマモモの大木も見逃せません。樹幹は空洞になっていますが、幹の根元から成長して、樹勢はきわめて旺盛です。幹の周囲が5㍍、高さ10㍍のヤマモモの樹齢は300年とみられています。このヤマモモは境内一帯に茂るコジイとともに市の指定文化財(天然記念物)として保護されています。
【奈良まほろばソムリエの会 副理事長 小野哲朗】



■宗派 黄檗宗
■住所 奈良市二名6の1492
■電話 0742・45・0616
■交通 近鉄富雄駅からバス「杵築橋」下車、徒歩約20分
■拝観 境内自由、本堂拝観は要事前申込
■駐車場 有(無料)



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