女性グループ(ソムリエンヌ)拓本講座

5月26日(日)奈良女性センターにて、拓本の基礎知識や技法、拓本に必要な用具作り講座を実施しました。拓本の起源は古く、中国の唐の時代より前から始まったと考えられるそうです。
拓本の技法には湿拓と乾拓とがありますが、今回の講座では湿拓を学習しました。
湿拓法で一般的に知られているのが魚拓ですが、被拓物(刻石など)に墨をぬって紙に写しとる方法では、被拓物を汚し、大切な文化財を汚損してしまうことになります。また、とった文字も左文字となるのでNGな方法です。

ソムリエの会、会員前田昌善氏による特別講座です。まずは湿拓に用いるタンポ(丸めた綿を薄手の絹で包んだもの)の大と小、一個ずつを作ります。
タンポは書画でいう筆と硯の役目をする道具です。

てるてる坊主を作る要領です

拓本には欠かせない必須アイテムのタンポ作りです。表面に凹凸やシワのできないよう注意が必要です。

板に彫られた百人一首や短歌を採拓します
名作を拓本にした作品のお披露目

講師の手直しもあって、ようやく完成です。
早春賦・幾山河(若山牧水)・百人一首より、天の原 ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に 出し月かも(阿倍仲麻呂)

6月2日(日)拓本講座の第2回目です。
三輪の檜原神社から西へ下った、井寺池(桜井市茅原)周辺で実施しました。
拓本をとる気象条件は、風のない曇天が望ましく、適度に湿度があり、風の無い穏やかな日が好適です。この日はまさに条件ピッタリの拓本日和でした。

先週のおさらいを兼ねて、拓本のとり方のお手本を見ながら手順を頭に入れます。
さすが手慣れたもので、サクサクと作業をされています。
注意事項を受けたあと、各グループに分かれて、三々五々採拓をスタート!

大和は国のまほろば たたなづく青垣山ごもれる大和し美し 倭建命 (川端康成揮毫)

お互い協力し合いながら、和気あいあいと作業を進めていました

かぐ山は 畝火ををしと 耳成と 相あらそひき 神代より かくなるらし いにしへも  しかなれこそ うつせみも つまをあらそふらしき 天智天皇(東山魁夷揮毫)

拓本にすることで見えにくかった文字が鮮明に浮き上がっています。

三諸は 人の守る山 本辺はあしび花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし山ぞ 泣く児守る山 (久松潜一揮毫)

こまかい部分が打ちこめなかったり、紙が破れてしまったり。簡単なようで、体力と根気の必要な作業です。

いにしへに ありけむ人も わが如か  三輪の桧原に かざし折りけむ 柿本人麿(吉田富三揮毫)
井寺池をバックに記念撮影

同じ碑を採っても、それぞれ個性が際立ちます。
拓本は天候に左右されたり、管理者の許可を得たり、限られた状況のなかで行う苦労の多い作業です。拓本をマスターするのは一朝一夕ならずと痛感しました。
いつか表装できるよう、腕を磨きたいと言う声もありました。

文・写真 女性グループ(ソムリエンヌ)道﨑美幸