鏡作神社は、古代の下ツ道沿いに鎮座し、赤の鳥居から社殿へ向かう参道は、木々の茂る中にあります。神社の正式名称は、鏡作坐天照御魂(かがみつくりにますあまてるみたま)神社です。朱塗りの本殿は流造(ながれづくり)三殿を並べ、それらを一つに連結した珍しい形です。
古代人は、鏡を己が御魂(みたま)の宿るものとして崇(あが)めました。崇神天皇の世、天照大神と八咫鏡(やたのかがみ)が笠縫邑(かさぬいむら)へ遷座した際に、鏡作部(かがみつくりべ)の人々は、内侍所(ないしどころ)に納める鏡の試鋳(しちゅう)品を、天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほのあかりのみこと)として祭ったとされます。神社の北東の唐古・鍵遺跡で、青銅鋳造の遺物が出土していますが、鏡作りの里に、この技術が伝えられたものと思われます。
神宝の「三神二獣鏡(さんしんにじゅうきょう)」は三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)の内区が残された精巧な逸品で、愛知県犬山市の東之宮(ひがしのみや)古墳出土の鏡と同范鏡(どうはんきょう)とされます。
辻忠雄宮司は「九州の平原(ひらばる)遺跡から出土した八咫鏡に比定される国宝内行花紋八葉鏡(ないこうかもんはちようきょう)のレプリカが拝殿に祭られており、秋の例祭の宵宮には、御神楽が奉納されますので、併せてご参拝ください」と話されます。
当神社は鏡・ガラス、美容業界の方からあつく敬われており、心も姿も美しくありたいと願う人々の参拝も多く、古代の鏡を祭る由緒ある神社です。
(奈良まほろばソムリエの会会員 島田宗人)
(住所)田原本町八尾816
(祭神)天照国照彦火明命、石(いし)凝姥(こりどめの)命(みこと)、天糠戸命(あめのぬかどのみこと)
(交通)近鉄田原本駅から徒歩約20分
(拝観)境内自由
(駐車場)有(5台、無料)
(電話)0744・32・2965
掲載記事(pdf)はこちら
|