八柱(やはしら)神社は奈良市東部の山間部、上(かみ)深川(ふかわ)にあり、神社は静かな空間に鎮座し、一般的には広く知られていません。
古くは興福寺・春日社の荘園「深川庄」に属し、祭神は「延喜式」の宮中八神である高御産日神(たかみむすびのかみ)を含む8柱の神々です。
神社では、毎年10月12日の宵宮祭の日に上深川の青年たちによって民俗芸能「題目立(だいもくたて)」が奉納されます。
室町時代末期にはすでにおこなわれていたといわれ、源平の武将を題材とした演目を、17歳を中心とした青年たちが台詞を分担して語り継いでいきます。楽器は奏でられず、独特の節回しと最小限の所作が特徴の芸能です。語りの最後には「フショ舞」が舞われます。それまでの静かな雰囲気から一転した動きが印象的です。曲目は「厳島」「大仏供養」「石橋山」の3曲が伝承されています。
題目立は、中世芸能の面影を今に伝える稀有(けう)な事例として、国の重要無形民俗文化財に指定され、また、ユネスコの無形文化遺産にも登録されるなど、日本を代表する民俗芸能の一つとして、世界的な評価を受けています。
なお、新型コロナウイルスの感染状況により、神社関係者のみで、実施される場合があります。
(奈良まほろばソムリエの会会員 浅井博明)
(住所)奈良市上深川町240
(祭神)高御産日神ほか7柱
(交通)JR・近鉄天理駅からバス約50分、「国道小倉」下車。徒歩約40分
(拝観)境内自由
(駐車場)無
(電話)0743・82・0201(奈良市都祁行政センター)
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