奈良県指定文化財対象の「災害対策等現況調査」について

2019 年6月 保存継承グループ

【調査の概要】

▷趣旨
有形文化財は常に大地震、火災などによる損壊・逸失のリスクをかかえています。奈良県内の文化財を後世に引き継いでいくため、地震・防火・獣害各対策はどのような状況にあるのかを、県指定文化財の建造物、彫刻にしぼって調査しました。対象社寺が国宝・重文も所蔵の場合は併せて行いました。

▷実施期間
2017年7月~2019年4月

▷対象
県指定文化財557件のうち、建造物は118件(191棟)、彫刻は104件の計222 件(2019年4月1日現在)。今回、建造物88件(120棟)、彫刻64件の計152件の調査を行いました。(対策が比較的充実している世界遺産登録社寺分、彫刻で立体ではない能面などの計34件は対象から除外。協力を得られなかった社寺などの分は36件でした。)

▷調査項目
地震対策、防火対策、獣害・シロアリ等の対策の3項目

▷調査先
県内39市町村のうち、対象の建造物、彫刻がある30市町村(12市10町8村)の社寺など125カ所で実施。市町村別で多かったのは奈良市33カ所、大和郡山市16カ所、五條市11カ所、宇陀市9カ所など。
125 カ所の内訳は寺院関係71カ所、神社29カ所、住宅など25カ所。

▷実施手法
保存継承Gメンバーが累計43日、125カ所で延べ507人(実人数16人)が参加。原則として1カ月2組各3~5人で訪問し、住職、宮司らから聞き取り調査。調査票はメンバーで評議後、担当者が記入しました。

【結果集計(125カ所)と課題】

〇地震対策
「実施済」( 県指定建造物または県指定彫刻安置の建造物では、瓦の軽量化と筋交い材施工)が25カ所(20.0%)、「一部実施済」が28カ所(22.4%)にとどまり、「未実施」が72カ所(57.6%)と最多に。
→建造物の強度把握のため耐震診断実施を求める声が聞かれました。
→過疎地域で管理が行き届かない仏像などの収蔵・展示施設が必要。

〇防火対策
「実施済」(消火器、火災,感知器、火災報知機の完備以上)が 83カ所66.4%)
で最多、「一部実施済」が34カ所(27.2%)、「 未実施」は8カ所(6.4%)。
→消防機関への通報直結システムの推進が求められます。

〇獣害・シロアリ等の対策
「被害あり」(シロアリ、アライグマ、スズメバチなど)71カ所(56.8%)、「 被害なし」が54カ所(43.2%)。
→被害軽減・防止のため県の積極的な姿勢が必要。

以上

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