山の辺の道を歩くと突然現れる大きな池、これが本堂池です。かつてここには廃仏毀釈(きしゃく)で消えた幻の大寺、内山永久寺が建っていました。阿弥陀如来を本尊とする真言宗古義派の寺院で、多くのお堂や塔がありましたが、明治維新後に絶えました。
池の北西寄りには、松尾芭蕉の「内山や外様知らずの花ざかり」の句碑が立っています。芭蕉が訪れた頃は、西の日光といわれるほど栄えた大寺院でした。その面影は本堂池のほか、『太平記』に後醍醐天皇が吉野に移る際に立ち寄ったと記される「萱(かや)の御所」跡の碑に、しのぶことができます。また山の辺の道を北に行った石上神宮に鎮守社の拝殿が、出雲武雄神社の拝殿(国宝)として移築され現存しています。
寺が絶えたことによって散失した寺宝は、各地の寺院や美術館に伝わり、東大寺の持国天、多聞天像(いずれも重文)をはじめ名品ぞろいです。これら移築建物や旧蔵の寺宝からも、往時の繁栄ぶりがうかがえます。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 岡田充弘】
■住所 天理市杣之内町
■電話 無
■交通 JR・近鉄天理駅からバス「勾田」下車徒歩約30分
■拝観 自由
■駐車場 無
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