大名持(おおなもち)神社は、吉野町を東西に流れる吉野川の右岸、旧伊勢街道と東熊野街道の分岐点の地に南面して鎮座します。
ご祭神は、大名持御魂神(みたまのかみ)つまり大国主命(おおくにぬしのみこと)、后神(きさきしん)の須勢理比当ス(すせりひめのみこと)、大国主命と国土経営に当たった少名彦名命(すくなひこなのみこと)で、全て出雲系であることが特徴です。
創建は不明ですが、平安時代の延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)に名神大社に列せられている式内社で、古代より非常に格式の高い神社です。
大名持神社は別名「大汝宮(おなんじのみや)」と呼ばれており、神社下の吉野川には、毎年6月30日に海水が湧き出るという言い伝えのある潮生渕(しおうぶち)があります。
奈良盆地南部にある一部の神社では祭りに先立ち、当屋の者が大名持神社に参詣し、社前の潮生渕で、吉野川原の小石を持ち帰って神事に用いる「大汝詣(まい)り」が今も残っています。
本殿背後にある妹山(いもやま)は円錐形の整った標高249bの山で、古くから入山を禁止された忌(いみ)山であったことから、転じて妹山と呼ばれるようになったと思われます。今日までうっそうとした広葉樹林が残されており、特にツルマンリョウをはじめ他の多くの珍しい暖地性植物が繁茂していることから、1928(昭和3)年に国の天然記念物「妹山樹叢(じゅそう)」として登録されています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 亀田幸英)
(住所)吉野町河原屋86
(祭神)大名持御魂神、須勢理比当ス、少名彦名命
(文化財)「妹山樹叢」は国天然記念物
(交通)近鉄吉野線大和上市駅からバス約5分、立野口下車すぐ
(拝観)境内自由
(駐車場)約5台(無料)
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