宇陀市榛原の萩原地区はかつて萩原宿と呼ばれ、伊勢本街道と青越え伊勢街道が分岐する重要な宿場町でした。その分岐点、札の辻から青越え伊勢街道を東へ4キロ余りの宮山山麓に「元伊勢」とも呼ばれる篠畑神社が鎮座しています。
「日本書紀」によると第11代垂仁天皇の時代に倭姫命(やまとひめのみこと)は天皇の勅命を受けて天照大神(あまてらすおおみかみ)を祭るにふさわしい土地を求めて「菟田(うだ)の篠幡(ささはた)」にたどり着きました。その後更に近江、美濃などの国を巡り伊勢国に入り、やがて現在の伊勢神宮を創建したと伝わります。これらの神社や場所は「元伊勢」と呼ばれています。この一時的な宮であった菟田の篠幡の地に天照大神を主祭神として祭ったのがこの篠畑神社の始まりと伝わっています。
平安時代に記された伊勢神宮の内宮に関する最古の記録書である「皇大神宮儀式帳(こうたいじんぐうぎしきちょう)」に「佐々波多宮」と記されていることから、平安時代初期にはこの神社の原形のようなものが成立していたと思われます。境内の「佐佐波多姫社」という小さな社には倭姫命に仕えた童女「佐々波多姫」が祭られています。
倭姫命が去った後もこの篠畑の地は伊勢街道を行き交う旅人の無事を見守り続けてきたことでしょう。
(奈良まほろばソムリエの会会員 東辻裕子)
(住所)宇陀市榛原山辺三2235
(祭神)天照大神
(交通)近鉄榛原駅より「天満台東三丁目」行バス終点下車、徒歩20分
(拝観)境内自由
(駐車場)なし
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