やまとの神さま
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第137回 2025年10月16日掲載
鳥居叩いて参拝告げる   榎本神社(奈良市)


春日大社本社回廊内の榎本神社=奈良市春日野町で


 春日大社の摂社(せっしゃ)である榎本(えのもと)神社は、春日大社本社回廊(かいろう)内の西南角の社殿に鎮座します。平安時代の「延喜式神名帳」に春日神社と記載された式内社です。その後、神木(しんぼく)の榎(えのき)の木が背後にあったことから、「榎本」と名付けられたと伝わります。
 春日大社をお参りする際は、まず榎本神社を参拝した後、若宮・本社に向かうのが参拝順序とされ、これにまつわる二つの説話があります。
 常陸(ひたち)の鹿島から大和に来る途中、安部山(現桜井市)にいた武甕槌命(たけみかづちのみこと)は御蓋山(みかさやま)の主であった榎本の神様に「地下三尺(約1メートル)まで借りたい」と申し出。「地下」がよく聞こえずに「面積」と誤解して承諾し、山全体の地下三尺までを貸すことになりました。
 現在も耳の遠い榎本の神様に「榎本さん、お参りに来ましたよ」と告げ、鳥居の柱を握り拳(こぶし)や扇子で叩(たた)いて参拝する作法が伝えられています。
 もう一つは、榎本の神様は安部山の武甕槌命に境内の土地の交換を申し出て実現した一方、安部山には参詣人が少なく、平安時代に再び春日に戻ったということです。
 江戸時代には宮中の祈願所になり、社殿には菊の御紋が刻まれた瓦が使われています。現在も縁結びや長寿を願う神様として信仰されています。
 (奈良まほろばソムリエの会会員 池田崇)


(住所)奈良市春日野町160
(祭神)猿田彦命(さるたひこのみこと)
(交通)JR・近鉄奈良駅からバス「春日大社本殿」下車 徒歩約5分
(駐車場)有料(春日大社駐車場)
(電話)0742・22・7788


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