やまと百寺めぐり
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第55回 2020年06月04日掲載
梅雨空に咲く沙羅の花  安楽寺(御所市)


境内横にたくさんの沙羅が植えられた安楽寺=御所市稲宿で

 新緑の候が過ぎれば梅雨の時期に入ります。ツアーガイドにとって、6月はどこにお連れしようかと思案する季節。
 そんな時にまず思い浮かぶのが聖徳太子ゆかりの安楽寺です。御所市稲宿(いないど)の静かな集落の菩提(ぼだい)所として、千年以上法灯を守っています。
 江戸時代の火災で本堂は現在地に移築され、1983(昭和58)年に再建されました。本尊の十一面観音菩薩(ぼさつ)像や聖徳太子二歳像は、しばし仏の世界へ誘ってくれます。
 境内横の斜面に大小百本余りの沙羅(さら)(ナツツバキ)が植えられています。 例年6月中~下旬が見ごろです。雨に濡(ぬ)れ緑の葉に包まれて、白い花が咲きます。
 わずか一日で散り地上に落ちる花弁を見ながら、平家物語の一節「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」を口ずさむのも一興です。
 約150㍍離れた安楽寺旧地の畑地に、ぽつんと安楽寺塔婆(重要文化財)が建っています。もとは三重塔でしたが長年の腐朽による損壊で、江戸時代に初層だけを残し宝形造りの屋根で覆いました。
 創建時の長押(なげし)や三手先(みてさき)組み物に往時の三重塔や大伽藍(がらん)がしのばれ、諸行無常の感慨を覚えます。

【奈良まほろばソムリエの会 会員 田原敏明】



■宗派 高野山真言宗
■住所 御所市稲宿1084
■電話 0745・67・0154
■交通 近鉄葛(くず)駅から徒歩約15分
■拝観 本堂拝観は要連絡、境内・塔婆は自由
■駐車場 本堂周辺に小型車駐車可



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