やまと百寺めぐり
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第56回 2020年06月11日掲載
薬師如来に癒やされる  戒長寺(宇陀市)


秘仏薬師如来(中央)と、両脇侍像(向かって右が日光菩薩、左が月光菩薩)=宇陀市教育委員会提供

 宇陀市の額井岳(ぬかいだけ)や戒場山(かいばさん)の中腹は、古くから山岳仏教の授戒の地として開かれました。その中心が戒長寺で、2体の薬師如来像をはじめ、多くの平安仏が残されています。戒長寺は1291(正応4)年、鎌倉時代の銘が残る梵鐘(ぼんしょう)が有名ですが、それに先立つ平安時代には寺院が建立されていたことがわかります。
 本堂の須弥壇(しゅみだん)中央には、本尊・像高約135㌢の薬師如来坐像が安置されています。厳しさの中にも円熟味が感じられるお顔です。数多くの襞(ひだ)が流れる衣文(えもん)、堂々とした体躯(たいく)は平安仏の特徴です。
 本尊裏の秘仏薬師三尊像が注目されます。奥壁に沿って仏壇があり、薬師三尊像は本尊と縦列に並び、本尊を後ろから見守るかのような姿です。中尊は像高84㌢、衣を左肩にまとい薬壺をささげて座ります。お顔は端正で穏やか、その表情には癒やされます。
 光輝く新緑の初夏、イチョウの落ち葉で境内が金色に染まる秋、どの季節も戒長寺は美しさにあふれています。

【奈良まほろばソムリエの会 副理事長 雑賀耕三郎】



■宗派 真言宗御室派
■住所 宇陀市榛原戒場386
■電話 0745・82・2841
■交通 近鉄榛原駅からバス「天満台東3丁目」下車、徒歩約30分
■拝観 境内拝観自由、堂内拝観は事前申請が必要
■駐車場 有



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