橿原市新口(にのくち)町にある近鉄橿原線新ノ口駅の西側に「新口村雪の別れ」と書かれた石碑があります。新口村は江戸時代の文豪「近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)」の人形浄瑠璃(文楽)の代表作「冥途の飛脚(めいどのひきゃく)」の主人公・忠兵衛の生まれ故郷です。
大坂・淡路町の飛脚問屋亀屋へ養子に行った忠兵衛と、遊女梅川との実話に基づく悲恋物語です。忠兵衛は遊郭で、その場の勢いから武家屋敷に届ける300両(現在の約3000万円)で梅川の身請けをしてしまいます。梅川と奈良の旅籠(はたご)屋や三輪の茶屋などを転々と逃亡し、新口村にたどり着きます。
やがて捕まった忠兵衛は処刑され、梅川は生涯、忠兵衛を弔ったそうです。善福寺にある忠兵衛供養碑は、1883(明治16)年に忠兵衛屋敷跡から移したものといわれています。
【奈良まほろばソムリエの会理事 大山恵功】
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