石床(いわとこ)神社は平安時代の「延喜式」に記載のある平群町内8古社の最初に大社として登場し、859(貞観元)年には従五位上を授けられるなど、平群谷の中でも独自の存在感を示しています。1924(大正13)年に旧社地から北200メートルの消渇(しょうかち)神社境内にご神霊だけが遷座されました。
旧社地は越木塚集落の南、竜田川支流の伊文字(いもじ)川沿い近くです。社殿はなく、朱塗りの鳥居とともにご神体の巨岩(高さ約6メートル、幅十数メートル)が昔のまま、石垣の上に鎮座しています。岩の中央部に亀裂が入り、そこに神が宿るとして御幣が祭られ、その真下の中段に拝石が置かれています。
この巨岩が磐座(いわくら)で、その形態から「陰石」(女性のシンボル)信仰として祭り伝えられてきたものと思われます。この神域は巫女(みこ)が祝詞(のりと)を上げ、神のお告げを下段の広場に集う村人に伝えるところでした。岩壁に神、中段に巫女、下段に氏子という形態は、原始宗教の代表的な祭祀(さいし)形態です。
また、伊文字川の下流には「西宮用水」という灌漑(かんがい)用水があり、弥生時代から水田を潤し続けています。
遷座された新しい神社には本殿、拝殿が建てられ、ご神体は陽石(男性のシンボル)様の自然石だそうです。
(奈良まほろばソムリエの会会員 喜多村英夫)
(住所)<現>平群町越木塚734
<旧>平群町越木塚783
(祭神)剣刃石床別命(けんじんいわとこわけのみこと)
(交通)近鉄竜田川駅から徒歩約25分
(拝観)境内自由
(駐車場)無
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