やまとの神さま
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第37回 2023年03月09日掲載
吉野山入り口、社殿復興願う  勝手神社(吉野町)


焼失前の社殿=吉野町吉野山で、成瀬匡章さん提供

 役行者が開山して以来1300年以上、幾多の歴史の残影や悲話が残る吉野山。その町並みの中、蔵王堂から南へ。上千本と如意輪寺に向かう道が二手に分かれる手前に、勝手神社があります。
 「勝手」とは吉野山の入り口という意味で、また勝負事や戦いの神としても信仰されてきました。
 吉野に隠れ住んだ大海人皇子(後の天武天皇)がこの神前で琴を奏でたところ、五色の雲の中から天女が現れ、袖を五度ひるがえして舞い、それが吉祥のしるしと伝えられています。この舞が宮中の「五節(ごせち)の舞」の起源とされ、大嘗祭(だいじょうさい)や新嘗祭(にいなめさい)でも舞われます。
 また鎌倉時代初期、源義経と別れた静御前が、吉野衆徒(しゅと)に捕らえられてこの神前で舞ったという伝承があり、境内には「静御前の舞塚」が残り、芸事の神として信仰されています。境内のベンチで、休憩や昼食をとるハイカーの姿も見られます。
 ところが、三間社流造(ながれづくり)檜皮葺(ひわだぶき)の社殿(江戸時代の再建)が2001(平成13)年9月、不審火により焼失してしまいました。
 今、ご神体は近くの吉水神社に遷座し、そこでご朱印もいただけます。
 再建の寄付も募っておられます。袖振山を背景とした本殿の早期復興・再建が望まれます。

(奈良まほろばソムリエの会副理事長 小野哲朗)


(住所)吉野町吉野山2354
(祭神)天之忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)、大山祗(おおやまつみの)命、久々能知(くくのちの)命、木花咲耶姫(このはなさくやひめの)命、苔虫(こけむしの)神、草野姫(かやのひめの)命
(交通)近鉄吉野駅下車、吉野山ロープウェイ「吉野山駅」から徒歩約25分
(拝観)境内自由。駐車場無。
(電話)0746・32・3024(吉水神社)

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