宇賀神社のある宇陀市菟田野宇賀志(うたのうかし)は、神武東征の舞台となった「穿邑(うかちのむら)」だという伝承があります。
古事記によると、神倭伊波礼毘古神(かむやまといわれびこのみこと)(のちの神武天皇)は、地元の豪族である兄宇迦斯(えうかし)と弟宇迦斯(おとうかし)の兄弟に八咫烏(やたがらす)を送り、服従するように命じました。弟は従いましたが、兄は従うと偽り、この地を守るため、神倭伊波礼毘古神を討つ計画を立てました。しかし、弟の密告で失敗し、自らがワナを仕掛けた「大殿(おおとの)」という建物で亡くなります。
現在も神社の近くに、大殿の読み方に似た「ヲドノ」という小字(こあざ)があります。兄が死んだ時に流れた血から「血原(ちはら)」と呼ばれる場所もあり、いずれも旧菟田野町観光協会の看板が立っています。
祭神は、この土地の神である宇迦斯神(うかしのかみ)ですが、住民は、地元を守ろうとした兄宇迦斯をたたえ、今でも大切に祭っているそうです。
本殿は春日造り(切り妻屋根で、棟と直角な面に入り口がある様式)で銅板葺(ぶ)き。手水舎(てみずや)の「子もうけ石」(陰陽石)は、夫婦でなでると、子宝が授かると伝わります。
10月第3日曜にある宇太水分(うだみくまり)神社(宇陀市)の「みくまり祭」には、子どもや太鼓を神輿(みこし)のように担ぐ「お太鼓台」が宇賀神社から繰り出します。
(奈良まほろばソムリエの会副理事長 松浦文子)
(住所)宇陀市菟田野宇賀志1096
(祭神)宇迦斯神(うかしのかみ)
(交通)近鉄榛原駅から「菟田野・東吉野村役場」行きバス乗車、「宇賀志」下車。南へ徒歩約25分
(拝観)境内自由
(駐車場)あり(無料)
(電話)なし
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