姫丸稲荷神社は天理市石上(いそのかみ)町の平尾山という丘にあります。辺りは平安時代の延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)に記された石上市(いそのかみいち)神社の旧社地。同神社が江戸時代に西へ移った後、末社の姫丸稲荷神社が旧社地に残ったとされます。祭神は宇迦御魂神(うかのみたまのかみ)です。
境内に「石上広高宮(いそのかみのひろたかのみや)伝承地」の碑があります。日本書紀が善政を敷いたと記す第二十四代・仁賢(にんけん)天皇の皇居跡と考証され、周辺は「宮の屋敷」と呼ばれました。平安歌人の在原業平(ありわらのなりひら)は平尾山の近くで生まれ、幼名を平尾丸といったそうです。
明治時代に神社の東で銅鐸(どうたく)2個が出土して、「石上銅鐸出土地」の碑もあり、文化の中心地だった事がうかがえます。
昔話「平尾稲荷のけんけんさん」が残っており、お稲荷さんを守るおばあさんの帰りが遅くなると、けんけんさん(キツネ)が赤い灯をつけて迎えに来たと伝わります。
拝殿前は60基近い木の鳥居が建ち、朱色と竹林の緑のコントラストが鮮やかです。旧暦2月に当たる3月に初午行事を行い、その前に厄年の人が自費で鳥居を1基ずつ新調する習わしですが、一般の寄付でも鳥居を奉納します。コロナ禍で3年ぶりとなった今年の初午では15基が新調され、氏子の信仰の深さを表すようで、まぶしく感じます。
(奈良まほろばソムリエの会会員 西慶子)
(住所)天理市石上(いそのかみ)町
(祭神)宇迦御魂神(うかのみたまのかみ)
(交通)JR櫟本(いちのもと)駅に近い奈良交通バス停「櫟本」から「天理北中学校」下車。徒歩約15分。
(拝観)境内自由
(駐車場)無し
(電話)無し
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