飛鳥時代の豪族、蘇我入鹿(そがのいるか)の名を冠した入鹿神社(橿原市)は、近鉄大和八木駅の西に鎮座しています。この辺りは入鹿の母の出身地で、入鹿は幼少期をこの地で過ごしたとも伝わります。
祭神は蘇我入鹿と素戔嗚尊(すさのおのみこと)で、入鹿を祭神とする全国で唯一の神社です。645年の乙巳(いっし)の変で中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)に滅ぼされた入鹿を逆臣とする説が有力ですが、地元の人は冤罪(えんざい)だと捉え、今に至るまで崇敬しています。
入鹿は頭脳明晰(めいせき)だったことから、学業成就の神として有名です。また、入鹿は乙巳の変で首をはねられたため、首から上の病に霊験あらたかな神として全国から信仰を集めています。
江戸時代初期の本殿は市指定文化財です。
明治時代に橿原神宮(橿原市)が造営されるにあたり、政府は「神武天皇を祭る橿原神宮の近くに逆臣である入鹿を神として祭るのは都合が悪い」などと判断。祭神を素戔嗚尊に換えて、神社名を地名から取った小綱(しょうこ)神社に改めるように指示しましたが、地元住民が拒んだそうです。
境内に建つ神宮寺である「正蓮寺(しょうれんじ)大日堂」は室町時代のもので、堂内に安置される鎌倉時代の大日如来坐像(ざぞう)とともに、国の重要文化財に指定されています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 田村基樹)
(住所)橿原市小綱町(しょうこちょう)335
(祭神)蘇我入鹿(そがのいるか)、素戔嗚尊(すさのおのみこと)
(文化財)1980年に橿原市が指定
(交通)近鉄大和八木駅から西へ徒歩約10分
(拝観)境内自由
(駐車場)あり(無料)
(電話)なし
掲載記事(pdf)はこちら
|