比売久波(ひめくわ)神社は、川西町唐院の国史跡・島の山古墳の西側にあります。平安時代の「延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)」に記載のある式内社で、由緒ある神社です。祭神は久波御魂神(くわみたまのかみ)・天八千千姫(あまはちちのひめ)で、古事記や日本書紀に記載の神ではありません。
比売久波の久波とは蚕桑(さんそう)を意味し、古くは桑の葉をご神体としたとの伝承や、天八千千姫は、桑の葉を香具山に植えて蚕を飼い絹を織ったという伝承から、同じ川西町にある糸井神社と共に、養蚕・絹織物の生産に関わる地域であったと考えられています。
檜皮葺(ひわだぶき)一間社春日造の本殿(県指定文化財)は、江戸時代初期に春日大社若宮神社本殿を移されたものと伝わり、現存する春日大社古社殿のうちで最古のものの一つです。
本殿と拝殿の間にある平石は、島の山古墳から持ちだされた石で、後円部頂上の竪穴(たてあな)式石室に使用された天井石であることがわかっています。
江戸時代に唐院村の村人らによって「黄檗(おうばく)版大般若経」が奉納されました。後に建てられた経蔵は近年に倒壊し、大般若経は現在、唐院自治会で保存されています。
本殿西側には「きりんじ」と呼ばれる神宮寺の箕輪寺(みのわでら)がありましたが、今では境内に基壇跡を残すのみとなっています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 川端眞知子)
(住所)川西町唐院473
(祭神)久波御魂神・天八千千姫
(文化財)本殿(春日造、県指定文化財)
(交通)近鉄結崎駅から徒歩約30分
(拝観)自由。秋祭りは10月第2土曜・日曜
(駐車場)なし
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