「波多の天王さん」と呼ばれ信仰を集めている神波多(かみはた)神社は、名阪国道五月橋インターの南東部、中峰山(ちゅうむざん)地区の台地に鎮座しています。参道に立つ鳥居の背後には本殿に向かう急な石段、表面に円い穴が彫られた盃状穴(はいじょうけつ)が複数残っています。
石段を登り振り返ると、参道が描く曲線が美しく、絵になる風景が広がります。その南西にある牛の宮は、秋に行われる天王祭りの神輿(みこし)のお旅所。天王の獅子舞が奉納され、牛の宮へのお渡りは郷愁を誘います。
創建の由来は、奈良に都が遷(うつ)った頃より疫病が流行し、大和の国の四境のひとつとして、また東国に通じる要衝の地であることから、除疫神(牛頭天王)が祭られました。
戦国時代の兵火で多くを焼失しましたが、江戸時代に再建された本殿は、五間社流造り、桧皮葺(ひわだぶ)き、千鳥・向唐破風(むかいからはふ)と様々な技法が用いられた社殿建築で、県の指定文化財です。
本殿裏の壁に「絵から抜け出す牛」が模写復元されています。諸国行脚の絵師が本殿外壁に牛を描いて立ち去ったところ、夜な夜な絵から抜け出し、周囲の田畑を食い荒らして村人を困らせました。再訪した絵師が、牛のかたわらに松の木を描き添え綱でつなぐと平穏が訪れたと伝わります。
(奈良まほろばソムリエの会会員 藤井哲子)
(住所)山添村中峰山310の1
(祭神)須佐之男命ほか2柱
(天王祭り)10月第4土曜
(文化財)本殿(県指定)
(交通)名阪国道五月橋インターから南へ約1キロ。駐車場なし。
(電話)山添村観光協会(0743・85・0081)
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