葛城山のふもと、笛吹神山に鎮座するこの神社の創建は神代とも神武天皇の代とも伝えられますが、明らかではありません。神社に伝わる旧記から崇神天皇の代にはすでにこの地に鎮座していたことがうかがえます。
祭神は火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)と天香山命(あめのかぐやまのみこと)です。王朝の笛師をつとめた笛吹連(ふえふきのむらじ)がこの地に居住、天香山命を祖先神として笛吹神社に祭られたのが始まりといわれています。
火雷大神は雷神、つまり雷雨をもたらす農耕神として祭られました。夏の雷をともなう雨が稲作にとってめぐみの雨で雷神は人びとが畏敬(いけい)する神でした。「延喜式」神名帳には火雷大神は大膳職(だいぜんしき)(宮中の食事や儀式のお膳を担当する役所)に祭られる三神のうちの火の神と記されています。
葛木坐火雷神社と笛吹神社は元々別の神社でしたが、現在は一つになり、その地名から正式名の葛木坐火雷神社よりも笛吹神社の名で地元の人に親しまれています。
境内では古びた大砲がひときわ目立ちます。これは日露戦争の戦利品として1909年に政府より贈られたものです。当時、日本各地の神社などに奉納されましたが、太平洋戦争などでほとんどが軍などに回収され、当時のままの姿で残っているのは大変貴重なものです。
(奈良まほろばソムリエの会会員 東辻裕子)
(住所)葛城市笛吹448
(通称)笛吹神社
(祭神)火雷大神、天香山命
(交通)近鉄御所線・忍海駅から徒歩約35分
(拝観)境内自由
(駐車場)あり。無料。
(電話)0745・62・5024
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