井光(いかり)神社は吉野川源流の川上村の井光集落に鎮座します。祭神は吉野始祖(しそ)井光(井氷鹿(いひか))です。
「古事記」によると、井氷鹿は、神武天皇(神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと))が東征で熊野から吉野に入った際、宇陀への進路を案内します。井氷鹿について「尾生(あ)る人、井より出(い)で来たりき。その井に光ありき」(岩波文庫版)と書かれ、国土の各地で活躍する神々を意味する国津神(くにつかみ)を名乗ります。
井氷鹿は神武天皇を案内する途中、御船山(みふねやま)の尾根に設けた拝殿で波波迦(ははか)(ウワミズザクラ)の木を燃やして鹿の骨で占い、御船の滝の上部に宮柱を立て天乃羽羽矢(あまのははや)を納めて進軍の勝利を祈願したとされています。井氷鹿は「日本書紀」では井光と表記されます。
神社の正面に立つと大きな杉と拝殿が印象的です。本殿後方に磐座(いわくら)とみられる高さ約1.5bの巨岩が露出しています。境内には数多くの石灯籠(どうろう)が並び、最も古いのは1686(貞享3)年寄進のものです。境内は手入れが行き届き、地区の人たちの思いが伝わってきます。
神社から御船の滝までハイキングコースが整備され、コース沿いには井氷鹿を祭る祠(ほこら)、現れたとされる井戸の跡などがあり、伝説ゆかりの地を巡ることができます。
(奈良まほろばソムリエの会会員 奥田八尋)
(所在地)川上村井光34
(祭神)吉野始祖井光(井氷鹿)
(交通)近鉄・大和上市駅からゆうゆうバスで武木(たきぎ)下車、徒歩50分
(拝観)境内自由
(駐車場)有り(無料)
(電話)0747・52・2079
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