県内には蘇我入鹿にまつわる場所がいくつかありますが、入鹿の甲(かぶと)が奉納されたと伝わる大淀町の甲神社もその一つです。祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)、素戔鳴(すさのおの)命など4柱で入鹿ではありませんが、古くから入鹿大明神と称され、氏子の今木地区住民に大切に守られてきました。
「大淀町史」などによると、6世紀に朝鮮半島、特に百済から織物、須恵器作りなどを伝えた人たちがこの地区などに移り住み「今来(いまき)の才伎(てひと)」と呼ばれました。蘇我氏はこれらの渡来人を保護したとされ、入鹿もこうした人たちと関係があったとの見方もあります。
かつては今木地区から、入鹿と敵対した中臣(藤原)鎌足を祭る談山神社のある桜井方面への嫁入り・婿入りは無かったとも伝わります。
拝殿の奥に本殿、その左右に境内社が鎮座します。本殿は春日造、屋根は桧皮葺(ひわだぶき)で、千木(ちぎ)や鰹木(かつおぎ)が設けられています。境内社は伊勢神社と春日神社で、いずれも春日造。伊勢神社には天照大神が祀られています。本殿の横には神木と遥拝所があり、ここから伊勢方向を拝むことができます。
秋の祭礼は10月第2日曜日。前日の宵宮に各地区の提灯(ちょうちん)で作られたススキ提灯が境内に立てられ、翌日の本祭へ気持ちを高めます。
(奈良まほろばソムリエの会会員 柳原恵子)
(住所)大淀町今木367
(祭神)大己貴命、 素戔鳴命、月読(つきよみの)命、保食(うけもちの)命
(交通)JR和歌山線・近鉄吉野線「吉野口駅」から徒歩約30分
(拝観)自由
(駐車場)あり(1台)
(電話)なし
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