県西北端の生駒市高山町は古くから「茶せんの里」として知られ、静かなたたずまいをみせています。高山は日本の茶せん生産量の約9割を占めていますが、なぜ盛んになったのでしょうか。
500年以上前の室町時代中期、ここは鷹山村という土豪の鷹山氏が支配していた村でした。鷹山城主の次男宗砌(そうせつ)は親交のあった称名寺住職で、わび茶の祖・村田珠光(じゅこう)から茶道具の創作を依頼され、茶せんを考案したとされています。
珠光が京都に移り、後土御門(ごつちみかど)天皇が茶の湯で宗砌が献上した茶せんを観賞、精巧なできばえに感動し、「高穂」の銘を下されました。宗砌は感激し、鷹山を「高穂」にちなみ高山に改めました。
後に家臣は茶せんの製法を秘伝として守り、一子相伝の技として伝えられています。1975年5月には国の伝統的工芸品に指定されました。
茶せんを学ぶには「高山竹林園」がお勧めです。近鉄・学研北生駒駅から北に進み、東大寺に宇佐八幡を勧請した時、平群郡で奉迎したとされる高山八幡宮、鷹山家の末裔(まつえい)で大仏再建の公慶上人ゆかりの華厳宗法楽寺や茶せん師の集落などを巡りながら向かいます。冬には竹の寒干しが見られます。また、鷹山氏の菩提(ぼだい)寺の旧円楽寺跡地と接し、そこには鷹山家歴代の墓地があります。
園内には資料館や茶室、日本庭園、茶せん制作実演、抹茶の体験和室、竹の生態園などがあり、まさに竹の博物館です。日本庭園を眺め、抹茶をいただきながらおくつろぎください。
(奈良まほろばソムリエの会会員 水間充)
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