2021年は聖徳太子の1400年忌の節目の年となり、太子建立の法隆寺では、遠忌(おんき)法要が厳かに行われました。
法隆寺の西院伽藍(さいいんがらん)には金堂や五重塔など世界最古の木造建築物群が現存し、1993年に日本で初めて「法隆寺地域の仏教建造物」として世界遺産に登録されました。
仏教は中国大陸・朝鮮半島から伝わりましたが、大陸では度重なる戦乱や天災で当時の建造物は失われており、法隆寺こそが、東アジアの古代木造寺院の姿を今に伝える貴重な存在なのです。
その中でも、ひときわ古い建物が世界最古の木造建築とされる国宝・金堂。その威厳ある風格と堂々たる姿には、随所に飛鳥時代の建築様式を見ることができます。
深い軒を支える雲のような形をした雲斗(くもと)や雲肘木(くもひじき)と呼ばれる組物(くみもの)が特徴ですが、それだけでは支えきれず、二重目の屋根の四隅に支柱がたてられ、後に龍の彫刻が取り付けられました。
また、寺のシンボルとなる五重塔は日本最古の塔です。塔は上層になるほど塔身の幅が細くなりますが、法隆寺の場合は、五層の幅が初層(しょそう)のちょうど半分になっているため、その安定感と優美な姿に、他の塔にはない魅力を感じます。
高さは約31メートル。地震が多い日本で1300年以上も倒壊していません。塔の中心を貫く心柱(しんばしら)が建物から独立して他の骨組みと直接つながっておらず、制振装置として揺れを吸収することが耐震性の秘密の一つです。
このように、法隆寺の伽藍には、先人の知恵が集積しているのです。
(奈良まほろばソムリエの会会員 佳山隆生)
|