東大寺二月堂の「修二会(しゅにえ)」は「お水取り」「お松明(たいまつ)」の名でも知られる行事ですが、正式名称は「十一面悔過(けか)法要」です。
これは私たちが日常知らず知らずのうちに犯しているさまざまな過ちを二月堂の本尊である十一面観世音菩薩(ぼさつ)の前で懺悔(さんげ)することです。その上で天下泰安、五穀豊穣(ほうじょう)など人々の幸福を願います。
奈良時代の752(天平勝宝4)年から、「不退(ふたい)の行法(ぎょうぼう)」として1270年もの間一度も絶えることなく毎年続けられてきました。大伽藍(だいがらん)の大半が焼失した時ですら、また江戸時代に本堂が火災で焼失した時ですら、途切れませんでした。
私たちに代わってその行法を行うのは11人の練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれる僧侶の方々です。本行は3月1日から14日までの2週間、精進潔斎(しょうじんけっさい)の上、毎日6回の行法を続けます。初夜の行法時に堂下の参籠所(さんろうしょ)から本堂に上る練行衆の道明かりとなるのが「お松明」です。回廊で打ち振られる、美しく見事なお松明の後、堂内では練行衆によりさまざまな行法が深夜まで続けられます。
3月12日深夜(13日の午前1時半ごろ)に、堂下の「若狭井(わかさい)」という井戸から観音様にお供えする「お香水(こうずい)」を汲(く)み上げる儀式が行われます。これが「お水取り」です。
今年も新型コロナ禍の影響で残念ながら「お松明」などの拝観についてさまざまな制約が設けられています(詳細は東大寺ホームページを参照)。
皆さんも練行衆と心を一つにして、懺悔し新型コロナ禍の終息や人々の幸福を願ってみてはいかがでしょうか。
(奈良まほろばソムリエの会会員 石田一雄)
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