近鉄大和西大寺駅の北西約1キロの秋篠の地にたたずむ古刹(こさつ)・秋篠寺。南門をくぐると参道の両側に木々や竹林が織りなす緑陰が広がり、参道東側に東塔跡があります。奈良時代後期創建の同寺は、1135(保延元)年の兵火で現本堂の講堂を残して金堂、東西両塔、南大門などが灰じんに帰したと伝わります。
塔跡では東塔跡のみ礎石が残ります。礎石は最大幅約1.5メートルの心礎(しんそ)1基と小ぶりの礎石7基。8基とも直径60~90センチの円形の中央に直径約20センチ、高さ5~8センチの枘(ほぞ)の出っ張りが見られる出枘(でほぞ)礎石です。奈良時代後期以降の塔の礎石様式の一つとされます。枘が礎石に乗る柱の底部に掘られたくぼみと連結されることで、耐震性向上を図るものです。
国宝の本堂は、奈良時代創建の講堂を、鎌倉時代に古い様式の緩い傾斜の瓦屋根を継承して再建されたものです。重文の伎芸天立像は頭部が奈良時代の乾漆造、体部が鎌倉時代の寄木(よせぎ)造です。東塔跡礎石も含め、奈良時代の痕跡を随所に残しているのも同寺の魅力です。
【奈良まほろばソムリエの会理事 久門たつお】
■宗派 単立
■住所 奈良市秋篠町757
■電話 0742―45-4600
■交通 近鉄大和西大寺駅からバス「秋篠寺」下車すぐ
■拝観 9:30~17:00 500円
■駐車場 有(無料)
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