聖武天皇の勅願により開かれた観音寺が当寺の始まりと伝わります。その後焼失しましたが、鎌倉時代初めの1208(承元2)年に解脱上人貞慶(げだつしょうにんじょうけい)が再興し、観音浄土にちなんで補陀落山(ふだらくさん)海住山寺(かいじゅうせんじ)に改めました。貞慶は、興福寺でひたすら研学につとめた当時の南都仏教界で随一の学僧でしたが、名利をのがれて笠置寺に住み、晩年になって、人々を教化し仏道にむかわせるため、ここに移り住みました。当寺には墓所もあります。
本堂西側の高台から望むと、昔に恭仁京(くにきょう)が営まれた瓶原(みかのはら)の平野と、その彼方に連なる山なみが海のように見え、標高200メートルの海住山(かいじゅうさん)は、南海の洋上に浮かぶ観音浄土・補陀洛山にも思われます。
もうすぐ秋の文化財特別公開(10月26日〜11月10日)が始まります。美仏として名高い奥ノ院の木造十一面観音菩薩立像(重文)、貞慶の所持した舎利が安置され華麗な扉絵が描かれた五重塔(国宝)の初層内陣、東大寺鎌倉復興像の模刻像といわれる四天王像(重文)などを特別に拝観できます。
【奈良まほろばソムリエの会 大久保衞】
■宗派 真言宗智山派
■住所 京都府木津川市加茂町例幣海住山20
■電話 0744−76−2256
■交通 JR加茂駅からバス(平日のみ)「海住山寺口」下車徒歩約20分、JR加茂駅からタクシー約10分
■拝観 9:00〜16:30
■駐車場 有(拝観申込者対象、無料)
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