世界遺産に登録され、普段は静寂をたもつ元興寺境内もこの日は参拝者で埋まります。2月3日の節分会。本堂前の広場には、井桁に組まれた太い生木と青々とした杉の葉が積まれ、火が放たれます。白煙と火の粉がもうもうと舞い上がり、どよめく歓声。兜巾(ときん)、結袈裟(ゆいげさ)姿の修験者が人々の願いのこもった護摩木を次々と炎の中に投げ入れます。鼻を刺す生木の匂い、「パチパチ」と葉の勢いよくはぜる音。
炎の中に不動明王を勧進し煩悩を焼き尽くす柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)。その荒々しい行は、冬籠もりしていた感覚を目覚めさせ、春を蘇(よみがえ)らせるかのようです。この後、煙がくすぶる燃えさしの木の上を裸足で歩く火渡りの行があり、見学者も参加できます。無病息災の験があるといいます。年男と年女による豆まきが続きます。
わが国最古の寺院とされる飛鳥の法興寺(飛鳥寺)の法統を継ぎ、古代には南都七大寺の雄として格式を誇った元興寺。寺は中世以降、民衆の信仰を集めて、奈良町などの人々の心を支えました。その伝統が息づく行事ももうすぐです。
【奈良まほろばソムリエの会会員 池川愼一】
■宗派 真言律宗
■住所 奈良市中院町11
■電話 0742・23・1377
■交通 近鉄奈良駅から徒歩約15分、またはバス「福智院」下車、徒歩約5分。JR奈良駅からバス「田中町」下車、徒歩約10分
■拝観 9〜17時、500円
■駐車場 有(無料)
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