役行者が開いたとされ、旧称は那迦寺(なかでら)とも大峯山上奥之院とも。大峯山から飛来したという伝承のある本尊は「抛(な)げ地蔵」「川上地蔵」として信仰され、和泉流狂言『川上』にも登場します。
盲目の男が地蔵仏にお参りし、目が見えるようにと願います。お堂にこもった男はその夜に夢を見て、目が開きました。念願かなった男は大喜びで家に向かい、迎えにきた妻と会います。
しかし目が開く条件は、妻とは悪縁なのですぐに別れよということでした。妻は地蔵仏をののしり、絶対に別れないと言います。ついに男も承知し、連れだって家に向かいますが、道の途中で男の目は再び見えなくなりました。
この寺は、後南朝の悲史を伝えます。山里に隠れ住んでいた南朝の末裔(まつえい)自天王らは、北朝方に襲われ殺害されます。しかし自天王を崇拝する村人たちは跡を追って首と神璽(しんじ)を奪還し、この寺に手厚く葬りました。
自天王即位の日である2月5日には毎年、遺品の前で「朝拝式(ちょうはいしき)」(村指定無形民俗文化財)が営まれます。
【奈良まほろばソムリエの会専務理事 鉄田憲男】
■宗派 高野山真言宗
■住所 吉野郡川上村神之谷(こうのたに)212
■電話 0746・52・0144(川上村教育委員会)
■交通 近鉄大和上市駅からバス「北和田口」下車、徒歩約30分
■拝観 境内自由
■駐車場 無
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