7世紀後半、飛鳥の地に創建され、平城遷都とともに奈良の地に移ってきた紀寺(きでら)の一院と伝わる璉珹寺(れんじょうじ)。縁起では、都が京都に遷(うつ)り、寺が衰退した平安時代に紀有常(きのありつね)が再興したと伝えられています。
盛衰を経ながらも、阿弥陀如来像を本尊に、聖観音・勢至(せいし)両菩薩(ぼさつ)像を脇侍(きょうじ)とする優れた造形の三尊像が伝えられています。
中尊の阿弥陀如来像は鎌倉時代作の裸形像で、50年に一度袴が取り替えられます。秘仏ですが、毎年5月のひと月間だけ開扉され、多くのファンが参拝されます。
下間景甫(しもつまけいほ)住職の説明では「璉珹寺本来の本尊は、三尊像に向かって右にまつられている聖観音菩薩像でした」とのことです。制作は平安時代初めと推定されています。像高105㌢、頭部と胴体は針葉樹の一木造り。顔は写実的で引き締まった表情ですが、胸や腹部の肉付きが豊かで、細い胴を左に少しひねっています。
左の勢至菩薩像は聖観音菩薩像の模刻で、制作年代は不明ですが、両像とも国の重要文化財に指定されています。女人の如く美しいプロポーションの3体の像に魅了される古刹(こさつ)です。
※2020年5月の特別開帳は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止となりました。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 小倉つき子】
■宗派 浄土真宗遣迎院派
■住所 奈良市西紀寺町45
■電話 0742・22・4887
■交通 JR・近鉄奈良駅からバス、「田中町」または「紀寺町」下車すぐ
■拝観 9~16時、500円(本尊拝観は5月のみ)
■駐車場 2、3台(無料)
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