柳沢家の菩提寺(ぼだいじ)である永慶寺は1710(宝永7)年、甲府藩主だった柳澤吉保(よしやす)により、甲斐国(山梨県)に建立されました。1724(享保9)年、二代藩主の柳澤吉里が甲府から郡山に国替えとなった際に寺は今の場所に移されます。
永慶寺には柳澤家に関する数多くの資料が所蔵されていますが、吉保ゆかりの文物(ぶんぶつ)をご紹介します。本堂外陣の正面に掲げられている「永慶寺」の扁額(へんがく)は吉保直筆で、力強い筆の勢いに圧倒されます。春と秋の彼岸、盆と正月の三が日に拝観することができます。
また、香厳殿(こうごんでん)の仏間に安置されている吉保と夫人の坐(ざ)像は、等身大の仲睦(むつ)まじい寿像(じゅぞう)です。
吉保が著した「護法常応録(ごほうじょうおうろく)」は、黄檗宗(おうばくしゅう)の三和尚(おしょう)と臨済宗の五禅師に直接または筆談により、禅の悟りを尋ねた記録です。館林(たてばやし)藩(群馬県)の小姓組から第五代将軍徳川綱吉の側用人(そばようにん)の就任にいたる二十数年間にわたる記録をまとめています。
このような真摯(しんし)な姿勢で長期間にわたり真理を探究している吉保の姿に、誠実な人柄を見いだすことできます。実直に生きようとした吉保の新たな人物像に思いをはせながら、扁額と向き合ってみてはいかがでしょうか。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 浅井博明】
■宗派 黄檗宗
■住所 大和郡山市永慶寺町5の76
■電話 0743・52・2909
■交通 近鉄郡山駅下車、徒歩約10分
■拝観 境内自由
■駐車場 有(無料)
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