「関西花の寺二十五カ所霊場会」に名を連ねる県内七カ寺の一つ。春のツツジで知られますが、晩秋の境内はカエデ、モミジなどの紅葉に埋もれます。「山と渓谷社」が2014年に選定した全国紅葉百選に県内からは談山神社とともに選ばれています。
824(天長元)年、淳和(じゅんな)天皇の勅願で空海が創建した、山の辺の道沿いの古刹(こさつ)。最盛期には四十八坊を数えましたが、室町中期の兵火や明治初期の廃仏毀釈(きしゃく)などの試練を経て現在に至ります。
四十八坊のうち、唯一残るのが旧地蔵院庫裏(くり)と、持仏堂とも呼ばれる同院本堂。切妻造りの庫裏は1630(寛永7)年、隣接する宝形(ほうぎょう)造りの同院本堂はその翌年の建立で、ともに重要文化財に指定されています。
庫裏は玄関部分が優美な唐破風(からはふ)造りで檜皮葺(ひわだぶき)、その他は杉皮葺という素材の異なる屋根の共存に趣があります。杉皮葺は大和葺とも呼ばれ、吉野産などの杉の樹皮を調達しやすいことから江戸期の「地産地消」と言えそうです。現在、旧地蔵院庫裏は長岳寺の庫裏として使われ、室町期の様式を伝える書院造りの座敷が歴史を感じさせます。
旧地蔵院庫裏の南に小池のある江戸初期の庭園が参拝者を和ませます。
【奈良まほろばソムリエの会 理事 久門たつお】
■宗派 高野山真言宗
■住所 天理市柳本町508
■電話 0743・66・1051
■交通 JR柳本駅から徒歩約20分、もしくはJR・近鉄天理駅、JR・近鉄桜井駅からバス「上長岡(かみなんか)」下車、徒歩約10分
■拝観 拝観 9~17時、400円
■駐車場 有(無料)
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