蘇我入鹿の首を葬ったとの伝承がある五輪塔=三重県松阪市飯高町舟戸
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飯高町郷土史は、「この五輪塔が蘇我入鹿の怨霊を鎮めるためのものなのか、あるいは全く無関係なものなのかは不明」としながらも、「“火の気のない所に煙は立たない”のことわざ通り、蘇我氏とは何らかの因縁をもつ土地であったのだろう。怨霊が再び都へ舞い戻らぬためにも、高見山の裏側の舟戸の地へ鎮魂することは考えられなくもない」と記している。
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歴史の舞台には、多くの悲劇の人物が登場するが、歴史書は往々にして勝者を正当化して英雄としてたたえる。
近年では、蘇我氏が仏教などの大陸文化の受容に主導的な役割を果たしたことが評価されるようになってきた。また、大化の改新を正当化するため、日本書紀は蘇我蝦夷(えみし)・入鹿親子を逆賊として描写した、という話もしばしば聞く。
真偽はともかく、敗者とされた者の中には、心ある人たちによってひそかに祀られ、伝承として語り継がれていることも少なくない。
今回、正史(せいし)の裏に見え隠れする蘇我入鹿の一面を、首伝承という側面から探ってみたが、つくづく歴史は面白いと思う。
(NPO法人奈良まほろばソムリエの会 露木基勝)
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