采女(うねめ)神社は春日大社の末社で、猿沢池の西側に、池に背を向け立ちます。
祭神は采女命です。「大和物語」によると、奈良時代に帝に仕えていた采女が、帝の寵愛(ちょうあい)が薄れたことを嘆いて猿沢池に身を投げ、それをかわいそうに思った帝が人々に歌を詠ませたとあります。後に采女の霊を慰めるため、猿沢池のほとりに社がたてられましたが、入水した池をみるのは忍びないと一夜にして社が西を向いてしまったとの話が伝わります。
また猿沢池の東のほとりには、衣掛け柳の石碑があり、采女が入水する際に衣を掛けたと伝わる柳があったといわれています。
毎年中秋の名月の日、采女の御霊を慰めるため「采女祭」が行われます。
艶やかな天平衣装をまとった人々が練り歩く花扇奉納行列から始まり、その後、采女神社で春日大社の神職によって例祭が厳かに営まれます。
やがて日が暮れると、雅楽が流れる中、猿沢池に天平衣装に身を包んだ人々が乗り込んだ二隻の管絃(かんげん)船が浮かべられます。
クライマックスには花扇を池に投じ、采女の霊を鎮めるため、祈りをささげます。月夜に浮かぶ管絃船は幻想的で美しく、その様子を見るために、猿沢池周辺は多くの人でにぎわいます。
(奈良まほろばソムリエの会会員 横山真紀子)
(住所)奈良市樽井(たるい)町15
(祭神)采女命
(交通)JR奈良駅下車徒歩約15分、近鉄奈良駅下車徒歩約5分
(拝観)開扉時自由
(駐車場)なし
(電話)0742・22・7788(春日大社)
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