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第65回 2018年05月10日掲載
神仙境の名刹 ―― 吉野町の龍門寺跡


龍門寺「下乗石」=いづれも吉野町で

 龍門寺(りゅうもんじ)は奈良盆地と吉野を隔てる龍門岳の南麓(なんろく)にあり、奈良時代に義淵(ぎえん)僧正が創建したと言われています。平安時代には藤原道長も参詣した名刹(めいさつ)ですが、戦国時代に廃寺になってしまいました。
 集落から近畿自然歩道を北に進めば、金剛界四方仏が彫られ、1333(元弘3)年の銘がある下乗石(げじょういし)が迎えてくれます。さらに登ると、県指定史跡である塔跡があり、ほぼ完全な形で礎石が残っています。心礎と隅礎石に円い穴が彫られているのが特徴です。奥には本堂、六角堂、宿坊の跡とされる場所がありますが、谷間なので宮都の寺院とは違う伽藍(がらん)配置だったと考えられています。
 途中には龍門の滝があり、江戸時代に訪れた松尾芭蕉は「龍門の花や上戸(じょうご)の土産(つと)にせむ」などの句を残しています。
 吉野が神仙境とされていたことが実感できる地であり、吉野町森林セラピーも行われています。

【奈良まほろばソムリエの会 池内力】



龍門の滝

■メモ■

近鉄大和上市駅からコミュニティバスで「山口」下車、北へ徒歩約15分。
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