龍王宮の通称で呼ばれることが多い石園座多久虫玉(いそのにますたくむしたま)神社は、大和高田市片塩町にある市内唯一の延喜式内神社です。この地は第三代安寧(あんねい)天皇時代の都とされる片塩浮孔宮跡(かたしおのうきあなのみやあと)の伝承地で、境内に「安寧天皇浮孔宮跡」の石標が建っています。
主祭神は建玉依比古命(たけたまよりひこのみこと)、建玉依比売命(たけたまよりひめのみこと)で、この2神は八咫烏(やたがらす)の名で知られている賀茂建角身命(かもたけつのみのみこと)を父親に持つ神です。
豊玉(とよたま)比古命、豊玉比売命が祭られていますが、2神はそれぞれ海神・龍神として知られており、龍王宮の名と関係があるとみられています。干ばつの時には雨乞い祈願が行われ、水神・農耕神として信仰されてきました。
神社の北を東西に走る古代からの横大路に沿うように、大神神社(桜井市)、石園座多久虫玉神社、長尾神社(葛城市)をそれぞれ龍の頭、胴、尾とする伝承があります。
龍王宮西側の大和高田市礒野(いその)は源義経の側室、静御前の母・礒野禅尼の古里とされます。伝承によると、義経の死後、母と礒野で暮らした静御前は自らの病気平癒を「笠神(かさがみ)の杜(もり)」の明神さんに祈ったといいます。
その明神さんは龍王宮の境内に移されて祭られ、毎年12月に静御前をしのぶ白拍子舞が奉納されています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 加地潤二)
(住所)大和高田市片塩町15の33
(主祭神)建玉依比古命、建玉依比売命
(交通)近鉄高田市駅から徒歩すぐ、JR高田駅から徒歩約15分
(拝観)境内自由
(駐車場)有(40台、無料)
(電話)0745・52・6855
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