於美阿志(おみあし)神社(明日香村檜前(ひのくま))は高台に鎮座し、近くには、いずれも特別史跡のキトラ古墳や高松塚古墳があります。
「飛鳥史跡事典」によると、この地は渡来系の豪族・東漢氏(やまとのあやし)の本拠地で、氏寺として7世紀に建てられた檜隈寺(ひのくまでら)の跡地が境内になっています。
同神社の創建年は不詳ですが、平安時代の「延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)」に式内社と記された古社です。
主祭神は東漢氏の始祖で、第15代応神天皇の時代に渡来したとされる阿智使主(あちのおみ)夫妻。神社名は「阿智(あち)」が「阿志(あし)」になまり、「使主(おみ)」は「於美(おみ)」に漢字が変化したうえ、2語が逆になるなど「阿智使主」が転訛(てんか)したと考えられます。
「続 明日香村史」などによると、江戸時代には御霊(ごりょう)明神と呼ばれ、今より西にありましたが、明治時代に現在地に遷座しました。境内には、主祭神の他に八坂神社と稲荷神社も祭っており、石灯籠(いしどうろう)にも多くの神々の銘文が刻まれています。
境内は「檜隈寺跡」として国史跡に指定され、瓦積基壇の講堂跡や金堂跡を確認。平安時代の十三重石塔(重要文化財)が残っています。
春秋の祭りと年3回の御湯(おみゆ)神事では、村内の飛鳥坐(あすかにいます)神社の宮司が祝詞を上げており、檜前の氏子に大切に守られています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 清水雅子)
(住所)明日香村檜前(ひのくま)594
(主祭神)阿智使主神(あちのおみのかみ)
(史跡)2003年に「檜隈寺(ひのくまでら)跡」として国の史跡に指定
(交通)近鉄飛鳥駅から徒歩約20分
(拝観)境内自由
(駐車場)なし
(電話)なし
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