万葉歌人で歌聖と称される柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)を祭神とする人麿(ひとまろ)神社は、南に畝傍山、西に二上山を望む橿原市地黄町(じおちょう)に鎮座します。橿原市史などによると、柿本神社(葛城市)から分霊され、地名は、この地が薬草サホヒメの根茎(地黄(じおう))の産地だったことに由来します。南にある桜池は、江戸時代に景勝地などを記した「大和名所図会」で「桜の頃は美観とす」と紹介されました。池の北側に「和歌の神」である玉津島神社の祠(ほこら)があります。
本殿では昭和の修理で南北朝時代の1345(康永4)年の棟木銘(むなぎめい)を発見。檜皮葺(ひわだぶ)きで、柱間は一つ。春日造(かすがづく)り(切り妻屋根で、棟と直角な面に入り口がある様式)と隅木(すみき)(軒の四隅を斜めに支える材)を合わせた「一間社(いっけんしゃ)隅木入り春日造り」(重文)です。ひさしの横木の木鼻(きばな)(端)に獣の形の装飾があります。
かつて祭祀(さいし)組織の芋座と餅座があり、10月に座祭を、5月に子どもがススを付け合う「すすつけ祭」(県無形民俗文化財)を開きましたが、今は中断中。5月に神社北方の野上塚で豊年祈願する参拝などは現在も地元住民により行われています。
境内には紅葉する無患子(むくろじ)がそびえ、人麻呂の万葉歌碑「秋山の黄葉(もみぢ)を茂み迷(まと)ひぬる妹(いも)を求めむ山道(やまぢ)知らずも」があります。
(奈良まほろばソムリエの会会員 平越真澄)
(住所)橿原市地黄町(じおちょう)445
(祭神)柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)
(文化財)本殿は国の重要文化財
(交通)近鉄大和八木駅から西へ徒歩約15分
(拝観)境内自由
(駐車場)なし
(電話)なし
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