室生龍穴(むろうりゅうけつ)神社は、雨乞いの神として知られる高龗神(たかおかみのかみ)を祭る古社です。神社の背後の岩窟(がんくつ)を、龍神のすむ「龍穴」として祭ったことを起源としています。
この龍神は、もともと奈良の興福寺の猿沢池にすんでいました。ところが奈良時代、帝の寵愛が薄れたことを悲しんだ采女(うねめ)が池に身投げしました。この穢(けが)れを嫌った龍神は、春日山の奥に潜み、さらに室生にやって来たと伝わります。現在この岩窟は「妙吉祥(みょうきっしょう)龍穴」と呼ばれます。龍穴の前には清水が蛇行した龍のように流れ、厳かな雰囲気が漂います。
本殿は一間社春日造り(正面の柱間が一つの切妻屋根で、棟と直角な面に入口がある様式)で、奈良の春日大社若宮社の旧社殿が江戸時代の1671(寛文11)年に移築されたものです。県の文化財に指定されています。
拝殿は、徳川五代将軍綱吉の生母・桂昌院の援助を受け、室生寺の般若堂を移築したものと伝わります。拝殿の正面には「善如龍王(ぜんにょりゅうおう)社」の扁額(へんがく)がかかっています。かつては龍の神様「善如龍王」を祭り、この神社のことを「龍王社」と呼んでいました。
秋祭りには黒と赤のたてがみの二頭(ふたかしら)の獅子が、鈴や剣を持って神楽を勇壮に奉納します。
(奈良まほろばソムリエの会副理事長 松浦文子)
(住所)宇陀市室生1297
(祭神)高龗神
(文化財)本殿は県指定文化財
(交通)近鉄・室生口大野駅からバス「室生龍穴神社」下車すぐ
(拝観)境内自由
(駐車場)なし
(電話)0745・93・2177
掲載記事(pdf)はこちら
|