三輪山の南西の麓(ふもと)に鎮座しており、すぐ近くを山の辺の道が通っています。御県(みあがた)とは天皇の食事に添える蔬菜(そさい)(野菜)を栽培する朝廷の直轄地を示しており、大和にあった六つの御県の一つ、志貴の地に建てられた式内大社です。
創建は明らかではありませんが、730(天平2)年の大和国正税帳(しょうぜいちょう)にその名が見られます。
主祭神は大己貴神(おおなむちのかみ)。本殿は流造檜皮葺(ながれづくりひわだぶき)、前に千鳥破風がつきます。拝殿は切妻造桟瓦葺(さんかわらぶき)。境内社は二社あり、琴平神社・厳島神社。拝殿東側には四つの磐座(いわくら)が等間隔で並んでおり、この場所が古くから信仰の場所であったことがうかがえます。
鳥居の前に立つと南には音羽山、鳥見山、御破裂山(ごはれつざん)の展望が広がります。桜井市金屋は、「八十(やそ)のちまた」といわれ交通の要衝でした。万葉集にも歌われた海柘榴市(つばいち)が立った場所です。東は伊勢街道を通じて初瀬(はせ)・宇陀・東国へ、南は磐余道(いわれみち)や多武峰(とうのみね)街道を通じて飛鳥・吉野・紀伊へ、北は山の辺の道を通じて奈良・山城・近江へ、西は横大路や大和川の水運により難波・瀬戸内海へとつながっていました。神社は第十代崇神天皇の磯城瑞籬宮跡(しきみずがきのみやあと)の伝承地といわれ、石碑が建っています。まさに古代ヤマト王権が発展していく拠点となった地です。
(奈良まほろばソムリエの会会員 岡本喜一)
(住所)桜井市大字金屋896
(祭神)大己貴神
(交通)JR桜井線三輪駅から徒歩約15分
(拝観)境内自由
(駐車場)なし
(電話)三輪恵比須神社(0744・42・6432)
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