浄見原(きよみはら)神社は、吉野町南国栖(くず)を流れる吉野川右岸の断崖に鎮座しており、祭神は天武(てんむ)天皇です。
大海人(おおあま)皇子(後の天武天皇)は、近江大津宮で、兄の天智天皇から皇位継承の要請を受けましたが、これを固辞して出家し吉野に逃れました。
伝承によれば、吉野の国栖人(くずびと)は、皇子を和田岩窟に匿(かくま)い、一夜酒(ひとよざけ)やウグイなどを献上するとともに、応神天皇に由来する歌舞「国栖奏(くずそう)」を奏上しました。
その後、壬申の乱で勝利した天武天皇は、即位に際して国栖人を召して国栖奏を奏上させました。
それ以降、大嘗祭(だいじょうさい)や節会(せちえ)などの重要な行事で奏上されましたが、時代が下るにつれてその機会が少なくなってきました。
このため、平安時代末、国栖人は、和田岩窟の近くに浄見原神社を創建して、国栖奏を奉納するようになり、以降、毎年、旧暦1月14日に絶えることなく行われています。
当日は、拝殿の通路部分が板でふさがれ、舞殿になります。
演じるのは、「翁筋(おきなすじ)」の家の人達で、舞翁2人、笛翁4人、鼓翁1人、謡(うたい)翁5人の計12人です。
拝殿から続く石段の上には本殿があり、石段には、一夜酒・ウグイ・木の実・根芹(ねぜり)・アカガエルが供えられます。
(奈良まほろばソムリエの会会員 池内力)
(住所)吉野町南国栖1
(祭神)天武天皇
(交通)近鉄大和上市駅から吉野町コミュニティバス(オンデマンド)で「浄見原神社口」下車、西へ徒歩約10分
(駐車場)あり(有料)
(電話)なし
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