各地の一言主神をお祭りする神社の総本社である葛城一言主神社は、葛城山の麓(ふもと)(御所市森脇)の小高い台地の木立の中に東面して鎮まっています。一言主大神は、『古事記』『日本書紀』に説話があり、雄略天皇が葛城山で狩りをした時き、鹿狩りをともに楽しんだ神とあり、悪いことも良いことも一言に言い放つと伝わっています。
この故事により、今日に至るまで「いちごんさん」や「いちこんじさん」という愛称で呼び習わされ、一言の願いであれば何ごとでも聴きとどけてくださる神として信仰を集めています。
『延喜式』で「名神大社」に列せられた古社であり、境内にある樹齢1200年と伝わる銀杏(いちょう)の大木は、古くから、この木にお祈りすると子どもを授かり、お乳がよくでると伝えられる乳垂れ銀杏として有名です。
拝殿前には、役行者(えんのぎょうじゃ)が行う架橋工事の際、一言主神が自らの容貌を恥じて夜だけ手伝ったという日本霊異記(にほんりょういき)の説話にちなむ松尾芭蕉の「猶(なお)を見たし 花に明行(あけゆく) 神の顔」の句碑が立ち、また、拝殿脇と参道脇には、神武天皇が、土蜘蛛(つちぐも)を葛網(くずあみ)で捕らえて埋め、「葛城」の地名説話となり、謡曲「土蜘蛛」の典拠とも伝わる蜘蛛塚が静かに納まっています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 岡田 充弘)
(住所)御所市森脇432番地
(祭神)一言主大神、大泊瀬幼武尊(おおはつせわかたけるのみこと)(雄略天皇)
(交通)近鉄御所駅から奈良交通バス(五條バスセンター行)宮戸橋(バス停)から徒歩約30分
(駐車場)有 約10台
(電話)0745-66-0178
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