漢国(かんごう)神社は593(推古天皇元)年、勅命により大神君白堤(おおみわのきらしらつつみ)が大物主命(おおものぬしのみこと)を、その後、717(養老元)年に藤原不比等が大己貴命(おおなむ ちのみこと) と少彦名命(すくなひこなのみこと)を合祀(ごうし)し、古くは春日率川坂岡社(かすがいさがわさかおかしゃ)と称していました。
本殿は三間社流造(さんげんしゃながれづくり)(正面柱間が三つ、屋根が前に伸びる様式)・檜皮葺(ひわだぶき)で桃山時代の建造物です。
神社には大阪の陣の際、徳川家康が戦に破れ境内の桶屋に忍び、九死に一生を得た伝承があります。家康は後にお礼参りの参拝をし、鎧(よろい)一領「茶糸威胴丸具足(ちゃいとおどしどうまるぐそく)」を奉納しました。鎧は奈良国立博物館に寄託され、神社には複製が置かれています。
また、境内には、日本で初めて餡(あん)入り饅頭(まんじゅう)を伝えた林浄因命(りんじょういんのみこと)を祭る我が国唯一の饅頭の社・林神社があります。
林浄因は中国浙江省の人で1349(貞和5)年に来朝して漢国神社の社頭に住み、故国で習い覚えた饅頭を作り好評を博しました。その後、足利将軍家を経て宮中に献上するに至りました。
毎年4月19日には、菓祖神(かそじん)・林浄因命の偉業を讃え、菓業界の繁栄を祈願する「饅頭まつり」が賑やかに行なわれ、全国からたくさんの饅頭が献上されます。当日限定の「復刻奈良饅頭」の販売もおまつりの楽しみの一つとなっています。
(奈良まほろばソムリエの会会員 鶴田吉範)
(住所)奈良市漢国町二番地
(祭神)大物主命、大己貴命、少彦名命
(交通)近鉄奈良駅から徒歩約5分、JR奈良駅から徒歩約15分。
(拝観)境内自由
(駐車場)あり(無料)
(電話)0742・22・0612
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