大台ヶ原は奈良・三重両県にまたがる日本百名山の一つで、吉野熊野国立公園に含まれる標高1500㍍前後の台地一帯を指しています。最高峰は県境の日出ヶ岳で1695㍍です。山頂の展望台からは西に大峰山系の八経(はっきょう)ヶ岳(1915㍍・近畿最高峰)が、東には熊野灘や広大な太平洋の大パノラマが望めます。
1961年にドライブウェイが開通するまでは一握りの登山者しか入ることのできない深山幽谷で、雨と霧のため魔の山と恐れられていました。幕末から明治にかけ、探検家・松浦武四郎などにより徐々に調査・開拓が行われ、今では避暑や紅葉を求める多くの人々で賑わう景勝地となっています。
一般的なコースは駐車場から日出ヶ岳に登り、展望台からの眺望を楽しんだ後、県境の道を南下、正木峠を越え、尾鷲辻から神武天皇の銅像が立つ牛石(うしいし)ヶ原に至ります。そこから西へ大峡谷に突き出した大蛇嵓(だいじゃぐら)の大岩壁に立ち、垂直に近い傾斜にスリルを感じつつ中の滝(落差250㍍・日本の滝百選)の最上部を遠望し、はるか眼下に熊野川上流の東ノ川の流れを望んで駐車場に戻る。深い森と豊かな水を体感できるルートです。
ただ、30年くらい前まではほとんど目にしなかったシカが大幅に増え、食害が発生、特に正木峠付近では立ち枯れした木々の異様な光景が広がっています。
一年の半分が雨といわれ、年間降水量が5000㍉超えることがある大台ヶ原。奈良県南部の降水確率を確認してからお出かけください。
(奈良まほろばソムリエの会会員 柏尾信尚)
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