吉野山では、毎年7月7日に、修験道(しゅげんどう)の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)(役小角(えんのおづぬ))が開いた金峯山寺蔵王堂(国宝)で、「蛙飛び」行事が行われます。蛙飛びは、同寺の「蓮華会(れんげえ)」の中で行われるものです。
蓮華会は役小角が産湯を使ったとされる大和高田市奧田の蓮池で摘み取った蓮の花を金峯山の神仏にお供えする法会です。
当日、弁天池で摘み取られた108本の蓮華は、蔵王堂本尊に供えられ法要が営まれます。この後、着ぐるみの大青ガエルが登場して、蛙飛びが行われるのです。このカエル、元は神仏を侮る高慢な男が、大タカにより断崖の上に置き去られ、身動きできずにいたところを金峯山寺の高僧が、法力で男をカエルに変えて蔵王堂に連れ帰り、一山をあげて法会を営んで人間の姿に戻した、という伝承に基づいて執り行われるものです。
翌日、奥駈(おくがけ)道の神仏に蓮華を1本ずつ供えながら金峯山の山上(山上ケ岳・標高1719メートル)の大峯山寺本尊に蓮華を供えます(蓮華入峰)。
7世紀後半、役小角は千日の苦行の末に感得した蔵王権現を桜の木に彫刻し、金峯山の山上・山下に堂を建て、まつったのが蔵王堂の起こりです。
1300年前から伝えられる信仰の形を受け継ぎ「懺悔(ざんげ)懺悔、六根清浄(ろっこんしょうじょう)」を唱和し山岳信仰の拠点であり、日本固有の宗教・修験道の聖地である金峯山は、次世代に引き継がれるべき大切な霊場です。
金峯山寺は、2004(平成16)年、ユネスコ世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産の一つです。
(奈良まほろばソムリエの会 藏本博)
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