奈良と言えば、多くの人が東大寺の大仏さまを思い浮かべます。日本人だけではなく世界中の観光客に人気です。座高15メートルもある大きさから、人々は親しみを込めて「大仏さん」と呼びますが、正式には盧舎那仏(るしゃなぶつ)(国宝)といいます。「すべてのものをあまねく知慧(ちえ)と慈悲の光で照らすほとけ」という意味です。
大仏造立当時の社会は天災が続き、長屋王の変に象徴される権力闘争が起こり、天然痘の流行で多くの国民が亡くなった天平パンデミックの時代でもありました。聖武天皇はこうした世の中を癒やし、国家の安泰と動物も植物も全てが栄えることを願い、盧舎那大仏造立の詔を発します。
大仏は「一枝の草、ひとにぎりの土を持ちて像を助け造らん」と願う多くの人々の協力によって完成しました。
その後、平安時代には地震による頭部の落下、戦国時代までに2度の戦火による大仏殿焼け落ちがあり、都度、修復されました。現在の大仏は奈良、鎌倉、室町、江戸時代とそれぞれの時代の人々の合作でもあります。
毎年8月7日、頭に手ぬぐいをかぶった白い装束の人々が大仏殿に集まります。「お身拭い」です。(2020、21年はコロナ禍で中止)。ある人は大仏さんの手の上に、ある人は天井から吊るされた竹籠に乗り、大仏さんを隅々まできれいにします。螺髪(らほつ)(ぐるぐるの巻き髪)の大きさは、頭上に乗った人間の頭と同じくらい大きいのもよく分かります。今も昔も多くの人に敬愛されている大仏さんです。
(奈良まほろばソムリエの会理事 清水千津子)
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