西大寺は奈良時代、平城宮を中心に「東の東大寺、西の西大寺」と称された官寺で、聖武天皇と光明皇后の娘である称徳天皇が鎮護(ちんご)国家と平和を祈願し、建立したのが始まりとされます。
「大茶盛(おおちゃもり)式」は西大寺の儀式の一つですが、現在では観光イベントとしても人気があります。鎌倉時代の高僧の興正菩薩叡尊(こうしょうぼさつえいそん)上人が延応元(1239)年、鎮守八幡神社での年始祈祷(きとう)の後、神に献茶した余福を参詣の村人たちに振る舞ったのが始まりとされます。
僧が大きな茶杓(ちゃしゃく)で抹茶をすくい、大きな茶筅(ちゃせん)で巨大な茶碗(ちゃわん)にお茶をたてます。全てが大きくダイナミックです。
その大きな茶碗を両手で持ってお茶を頂き、順次廻(まわ)し飲みをします。
力の弱い人は1人では持ちきれず、周りの人に支えてもらいながら飲むことで、和やかな雰囲気になります。一つの大きな器のお茶を、そこに集まった人々が「一味和合(いちみわごう)」の精神で助け合いながらお茶を廻し飲むことから、和み合い、結束が高まります。一味和合とは、叡尊上人が志した戒律の根本精神なのです。
また、民衆救済の一環として、不飲酒戒(ふおんじゅかい)に基づいて酒盛りではなく、当時は高価な薬として用いられたお茶を振る舞って「茶盛」と称し、「医療福祉の実践」とされました。
今では1月15日の初釜や4月第2土・日曜と10月第2日曜に大茶盛式を開催。他の時期でも30人以上の団体申し込みを随時受け付けています。ただ、コロナ禍の今、団体申し込みの可否の事前確認が必要です。
(奈良まほろばソムリエの会会員 毛利明)
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