明日香村の高松塚、キトラの二つの古墳は石室に壁画が描かれており、国の特別史跡(壁画は国宝)に指定されています。
高松塚古墳は下段23メートルの円墳で、地元民がショウガ貯蔵のため穴を掘っていたところ、奥に古い切り石が見つかったのが発端です。
1972(昭和47)年の調査で棺(ひつぎ)を囲むように石室内壁の漆喰(しっくい)に鮮やかに彩色された壁画が見つかりました。
男女16人の人物像が細かく描かれ、玄武・青龍・白虎の図や日月像、星宿図なども発見されました。飛鳥時代の服装などを知る貴重な資料でもあり、連日のように報道され、日本中に考古学ブームが巻き起こりました。被葬者は出土した人骨などから熟年男性で有力皇族と推定されています。
壁画は近くの修理施設で修理をし、「高松塚壁画館」で壁画の復元図が紹介されています。
キトラ古墳は下段14メートルの円墳で83(昭和58)年、ファイバースコープによる調査で内壁の漆喰に獣頭人身十二支像や四神図、極めて精巧な天文図(世界最古)、日月像などが発見され、第2のブームに。被葬者は皇族に関係する人物と推定されています。カビの発生で変質を防ぐため、壁画は、はぎ取って修復され、保存管理して定期的に公開もされています。「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」では壁画や出土品が展示されています。
二つの古墳は共に山の稜線(りょうせん)を少し下がった斜面に築造されており、7世紀末から8世紀前半の風水思想に基づく終末期古墳とされています。
(奈良まほろばソムリエの会副理事長小野哲朗)
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